ADLでは多角的に捉えることが大切

介護の現場において、ADL(日常生活動作)を意識することはとても重要であると言われています。
例えば、リハビリテーションを行う場合も、むやみやたらに訓練を推し進めるのではなく、「自分一人で自宅のお手洗いに行き来できるようにすること」など具体的な方針を決定した上で、リハビリの方法や内容を検討するのです。
仮に同じように足が不自由な高齢者が二人いて、どちらも自宅のトイレでの排泄時に介助が必要だったとしましょう。
肉体的な問題が類似していたので、どちらも同じ歩行訓練などのリハビリに取り組んで貰うことを決め、訓練が始まります。
二人の高齢者も一生懸命取り組んだにも関わらず、最終的に一人は目標を成し遂げたもののもう一人はうまくいかないままになったという結果に終わるケースは珍しいことではありません。
その原因を考えると、リハビリ不足や他の病気があるといった論点に行き当たってしまうこともあるでしょう。
確かに、ADLは行動に注目した介護の状況を示す値です。
しかし介護の現場で重要なことは、個人の身体能力だけにとどまりません。
実は、リフォームが行われていないトイレは狭く、うまく身動きが取れないから一人で排泄ができないというその他の物理的な問題があるかもしれないのです。
このような理由では、訓練よりも先に住環境を整える方を優先して行った方が良いと言えます。
つまり、ADLで個々の身体状況を整理したら、次に問題改善のために必要なことを多角的にしっかりと捉えることが大切なのです。